自己破産やめた理由と後悔|事務員が見た実例

こんにちは、ケイです。
「自己破産、一度はやめようって思った」
事務員時代、この言葉を何度聞いたことだろう。
相談に来た方のうち、かなりの割合が「破産は怖い」「踏み切れない」という気持ちを抱えたまま来所していた。そのなかには、一度「やめた」と判断してその場を去り、数ヶ月後に再び戻ってきた方も少なくない。
今日は、そのなかのひとつのケースを取り上げたい。
30代の会社員・Aさん(仮名)の話。
最初の相談では「やっぱりやめます」と帰っていったAさんが、どんな経緯で再相談に戻り、最終的にどう動いたのか。事務員目線でリアルに書いていく。
Aさんのプロフィール
- 年齢:35歳(相談時)
- 職業:中規模メーカーの営業職(会社員)
- 家族構成:妻・子ども2人(小学生と幼稚園児)
- 借金総額:約580万円
- 借入先:消費者金融3社、クレジットカードのキャッシング2社、計5社
- 滞納状況:相談時点で2社が2〜3ヶ月滞納、1社は督促状が届き始めていた
- 住居:持ち家(住宅ローン残り約1400万円)
「妻にはまだ話していません。職場にもバレたくない。子どもの学費も考えると…」
最初の問い合わせフォームには、こんなコメントが添えられていた。
最初の相談──「やっぱり、やめます」

Aさんが最初に来所したのは、ある平日の夕方だった。
スーツ姿で、かなり緊張した様子。話しかけると声が少し震えていた。
借金のきっかけは、30歳前後から少しずつ積み上がったカードローンと、転職の空白期間中に使った消費者金融だったとのこと。収入が戻っても返済に追われる生活が続き、5年ほどで580万円まで膨らんでいた。
弁護士との面談では、借金の内訳・収入・家族構成を確認したうえで、選択肢が整理された。
- 任意整理:月々の返済を計算すると、月10〜12万円が必要。今の収入では厳しい。
- 個人再生(住宅ローン特則):住宅を維持しながら借金を圧縮できる可能性がある。ただし手続きが複雑で、収入の安定が条件。
- 自己破産:借金はリセットできるが、持ち家は手放す可能性が高い。
弁護士から「今の状況では自己破産か個人再生が現実的です」と説明を受けた時、Aさんの表情が一変した。
「家を手放すのは…ちょっと考えられないです」
「子どもが小学校に上がったばかりで、転校させるのも…」
そのまま沈黙が続き、最終的にAさんは「もう少し考えます」と言って立ち上がった。
私は事務員として同席していたわけではないが、面談後に弁護士から状況を共有してもらっていた。「返事の保留」は珍しくないので特別に何かをするわけではないが、Aさんのケースはその後の動きが印象に残っている。
「やめた」後の4ヶ月
最初の相談から、Aさんからの連絡は途絶えた。
事務所側からの追跡はしない方針だったので、私たちはただ待つ形になる。
ただ、滞納が続く状況は変わらない。差押えのリスクも、時間が経つほど高まる。そのことをAさんが知っていたかどうかは、当時はわからなかった。
4ヶ月後、Aさんから再び問い合わせフォームが届いた。
「以前相談に来たAです。また話を聞いてもらえますか。もう限界かもしれなくて」
このメッセージを見た時、正直なところ「戻ってきてくれてよかった」と思った。
4ヶ月のあいだに何があったのか。来所してから話を聞くと、おおよそこういう経緯だった。
- 最初の相談後、「なんとか自分で返せるかも」と思い、節約を試みた
- ただし返済は進まず、むしろ滞納がもう1社増えた
- ある日、勤務先に債権者から電話が入った(本人確認の電話だったが、職場に借金の存在が伝わるかもと感じてパニックになった)
- 妻に話したところ、「早く相談してほしかった」と言われ、一緒に戻ることにした
再相談──選択肢が「個人再生」に絞られた理由
再来所時には、妻も同席していた。
2回目の面談では、前回よりも情報が整理されていた。Aさん本人も覚悟が固まっていたせいか、表情は最初よりずっと落ち着いていた。
弁護士と再確認した結果、選択肢は「個人再生(住宅ローン特則)」が有力になった。
理由はこうだ。
- Aさんの収入は安定しており、圧縮後の借金(個人再生では一般的に元本を大きく減額できるケースが多い)なら月々の返済が現実的なラインに収まる可能性があった
- 妻も「家を守れるなら」と個人再生に同意した
- 自己破産は家を手放すリスクが高く、家族の合意が得られなかった
ただし、弁護士からは率直な説明もあった。
「個人再生は手続きが複雑で、書類も多いです。3〜5年の返済計画を実行し続ける必要があります。途中で崩れると厳しくなる」
Aさん夫婦はそれを聞いたうえで、「やります」と答えた。
この時、私もその場にいて、Aさんの表情を見ていた。最初の相談の時とは別人のような、静かな決意のある顔だった。
「4ヶ月、本当につらかったと思います。でも戻ってきてくれてよかった」と心のなかで思った。
「自己破産やめた」という選択の背景にあったもの

Aさんのケースを振り返って、私が感じたことを正直に書く。
「自己破産やめた」という判断自体は、間違いではなかったと思う。
Aさんにとって「家を守りたい」という気持ちは本物だったし、個人再生という別の選択肢が実際にあった。最終的に自己破産ではなく個人再生で動いたのは、Aさんの状況に合っていた判断だと思う。
ただ、問題だったのは「やめた後の4ヶ月」だ。
この期間に滞納がさらに増え、職場への電話リスクも生じた。「もう少し考えます」と帰ることで、状況は改善しなかったどころか、悪化していた。
事務員として何十件もの相談を見てきて感じるのは、「一度持ち帰ること」と「先送りにすること」は全く違うということ。
- 具体的に何を確認して、いつ決める、という道筋があるなら「持ち帰り」
- ただ怖いから、考えたくないから動かないのは「先送り」
Aさんは当初、後者に近かった。
もし4ヶ月ではなく、もっと早く再相談していたら、あの職場への電話リスクも経験しなかったかもしれない。
関連する経緯について、私自身の体験を書いた記事もある。よかったら参考にしてほしい。
【体験談】350万円の借金を任意整理で完済した27歳の私の話
自己破産を「やめる」前に確認すべき3つのこと
「自己破産やめた」と思った時、立ち止まって確認してほしいことがある。
① 別の選択肢(個人再生・任意整理)がちゃんと検討されたか
自己破産が向かないケースでも、個人再生や任意整理で解決できるケースは一定数ある。
特に「家を残したい」「収入はある程度ある」という人は、個人再生が有力な選択肢になりうる。弁護士にきちんと試算してもらったうえで「破産は不要」と判断したなら、それは正しい判断かもしれない。
ただ「怖いから」「イメージが悪いから」という理由だけで選択肢から外すのは、機会を失うことになる。
② 「やめた後」の現実的なプランがあるか
「やめた」後に何をするのか。節約する、副業する、別の借入で凌ぐ——それが本当に機能するプランなのかどうかを、数字で確認してほしい。
Aさんのように「なんとかなるかも」という感覚で4ヶ月を過ごした結果、状況が悪化するケースは少なくない。
感覚ではなく、月の返済総額・収入・生活費を並べて「本当に回るか」を確認する。それが先送りとの違い。
③ 滞納が続く場合の差押えリスクを知っているか
債務整理をしないまま滞納が続くと、最終的には「差押え」が起きる可能性がある。
給与の差押えは、職場に借金の存在が伝わる最も直接的なルートのひとつ。Aさんが4ヶ月の間に恐れていたことは、現実になりえた。
「バレたくない」という気持ちがあるなら、むしろ早めに動いた方がリスクを抑えられる。事務員時代の体感では、受任後は債権者からの直接連絡が止まるケースがほとんどで、「動いてからの方が静かになった」という方が多かった。
自己破産という選択肢を「正しく怖がる」ために

自己破産は確かに大きな手続きだ。
でも、事務員として多くのケースを見てきて思うのは、「自己破産=人生終わり」というイメージは、実態とかなりズレているということ。
一般的には、会社員の場合は職場に直接通知が届くケースは通常なく、多くの方が生活を維持しながら手続きを進めている。資格制限は手続き中の一定期間のみ対象になる職種があるが(弁護士・司法書士・宅建士など一部)、一般的な会社員・営業職・製造業などには直接の制限はないとされている。
ギャンブルや浪費があっても、裁量免責で認められるケースは一定数ある(最終判断は裁判所)。反省の姿勢や経緯の説明がきちんとできることが重要とされている。
Aさんは最終的に自己破産ではなく個人再生を選んだが、それは状況に合った判断だった。もしAさんに家がなかったら、あるいは収入がもっと不安定だったら、自己破産が最善の選択肢だったかもしれない。
「自己破産やめた」は選択であって、逃げではない。ただ、それが「先送り」にならないよう、別の道を見つけることが大切だと思う。
関連する体験談もあわせて読んでみてほしい。
【体験談】500万円の借金を自己破産した30代男性の全記録(元事務員のケイが解説)
同じ迷いを抱えているあなたへ
「破産は怖い」「でもどうしたらいいかわからない」
その気持ちは、Aさんも私自身も、同じように持っていた。
大事なのは、「怖い」で止まらないこと。
選択肢を知った上で決める人と、知らないまま先送りにする人では、1年後・2年後の状況がまったく違う。
まず相談だけしてみる、という一歩でいい。
弁護士や司法書士への相談は、「依頼を決める場」ではなく「選択肢を知る場」だと思ってほしい。それだけで、頭の中がずいぶん整理される。
個別のケースについては、ぜひ弁護士・司法書士に直接相談を。あなたの状況に合った選択肢を、一緒に確認してほしい。
※プライバシー保護のため、複数の相談例を組み合わせ、属性・金額の細部を改変しています。